貸金業者は、10年前、20年前と比べて急激にその数を減らしています。その理由はいくつかあるわけですが、大きな理由の一つに貸金業務取扱主任者の設置義務があると言われています。
以前は、この資格は民間資格のひとつに過ぎず、研修に参加するだけで簡単に資格が取得できたのですが、2010年6月より国家資格として制度化されました。現在では、貸金業務取扱主任者資格試験に合格し、なおかつ内閣総理大臣の登録を受けたものしか貸金業務取扱主任者にはなれません。
この制度が実施された背景には、貸金業界の信頼性の低さがありました。
代表的な悪質業者について言うと、貸金業に関する十分な知識と経営能力を備えていない比較的年齢の若い代表者が、安易に開業し、経営に行き詰まる。または、当初から不正な意図を持って登録し、開業後すぐに違法行為を行う。
ウィキペディアより
『貸金業は簡単に儲かる』という理由で知識も経験もない20代の若者が安易に開業し、不正に手を染め利用者が被害者になっていくというケースが珍しくはありませんでした。
もちろん、当時も違法行為には取り締まりも処分も行われましたが、参入障壁が低いために処分を受けてもまた違法行為を意に介さない若者が参入していくという構造的な問題があったのです。
こうした参入障壁の低さを改め、誰でも簡単には参入できないようにしようという狙いで制度化されたのが貸金業務取扱主任者資格です。
それまでは研修参加でOKだったものが、国家試験に合格しなければならなくなりました。さらに、合格後に内閣総理大臣の登録を受けなければ主任者にはなれません。試験でハードルを設け、さらに登録時にもハードルを設けたわけです。
ちなみに、内閣総理大臣の登録に関して、登録を拒否する要件というものがあります。主なものを挙げると、
・破産して復権してない人
・登録を取り消されて5年未満の人
・禁錮以上の刑を受けて5年未満の人
・関連法令に違反して5年未満の人
・暴力団員
・その他、不正、不誠実な行為をしそうな人
などです。これらの拒否される要件を見ても、いわゆる反社会的な勢力に該当する人を排除することが明確に表れています。さらに、内閣総理大臣は、主任者登録に当たっては警察庁長官の意見も聞くことになっています。つまり、国からにらまれているような人はまかり間違っても貸金業務取扱主任者にはなれないということです。
貸金業務取扱主任者は必須
以上に挙げたような、"ある一定の人たち"にとっては厳しいハードルを設けたうえで、そのハードルを越えた人を営業所に設置しないと貸金業は営んではならないことになっています。
これで多くの貸金業者は廃業に追い込まれたわけです。
研修に参加しさえすれば正規の貸金業者として営業できていたものが、国家資格に合格し、登録審査に通過できた人を確保しない限り、貸金業は営業できなくなったのです。
ちなみに、この主任者は50人に1人の設置が義務付けられています。
仮に、大きな営業所で51人の従業員がいたとしたら、主任者は2人設置しなければなりません。
さらに、兼任することは一部の例外を除いて認められていません。誰かひとり優秀な人に資格を取らせて、その人の名前を使って複数の営業所を展開するということはやってはならないのです。
この取り決めを守らずに、主任者を置くことなく貸金業を営んでいる業者はすべて違法業者、闇金融ということになります。