先日の『ひるおび』では、フランスの同時多発テロを受け、「解決!ジャッジマン」のコーナーで「テロと旅行」について法律の面から取り上げていました。
「テロが不安なのでツアーをキャンセルしたら、キャンセル料がかかるか?」
「テロ騒動に巻き込まれてけがをしたら、医療費はどうなる?」
といった問題に答える内容です。
年末年始に向け海外旅行を計画する時期でもあり、気になる方も多いのではないでしょうか?
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目次
フランス・パリの現状
2015年11月20日にパリで起こった同時多発テロでは130人が亡くなり、フランスでは「非常事態宣言」が出されました。エッフェル塔やルーブル美術館といった主要観光名所が営業を取りやめ、観光客も激減しているといいます。
ひるおびより
今では観光・商業施設の多くが通常営業を再開し、フランスは国ぐるみで観光業への緊急援助を行うと発表していますが、非常事態宣言は継続中です。街では警官や兵士も多く見られ、緊張感がただよっているとのことです。
その状況を受け、想定される問題に、元裁判官で弁護士の八代英輝氏が答えていました。
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旅行のキャンセル料はどうなる?
問題
「12月に夫とパリ旅行を計画していたが、旅行を楽しめる気分ではないのでキャンセルしたい。出発2週間前に旅行会社に連絡をすると、『ツアーは催行予定であり、お客様都合のキャンセルなので、旅行代金の20%がかかります。』と言われた。パリの状況が不安定なのに、それでもキャンセル料を払わないといけないか?」
番組出演者や観客の意見は、キャンセル料を払わないといけない、という声がやや優勢です。
八代氏の答え
「キャンセル料を払う必要がある可能性が高い」
とのことでした。
まずキャンセル料のシステムについての説明です。旅行契約の手本となるのが、「国土交通省 標準旅行業約款」というもので、第16条2項の「旅行者の解除権」で、どういう場合にキャンセル料を払わずにツアー契約を解除できるかが決められているそうです。
ひるおびより
これによると、
旅行の安全かつ円滑な実施が不可能であればキャンセル料は必要ない
ことになります。では、「旅行が安全かつ円滑に実施されそうかどうか」は、どう判断されるのでしょうか?
その判断基準のひとつが、外務省が発表している「海外安全情報」で、危険度に応じて4つのレベルに分かれています。このレベルによって、旅行会社のキャンセル対応が変わってくるようです。
レベル2 不要不急の渡航は止めてください=ケースバイケース
レベル3 渡航はやめてください(渡航中止勧告)=旅行の安全かつ円滑な実施は不可能
レベル4 退避してください(退避勧告)=旅行の安全かつ円滑な実施は不可能
つまり、レベル1だとキャンセル料はかかる、2だとケースによる、3、4だとキャンセル料は不要ということになります。
そこで、フランス、そしてパリは「海外安全情報」でどう分類されているかが気になりますが、現在、危険情報は出されていないとのこと。
他の要素を勘案しても、
『旅行の安全かつ円滑な実施は「不可能とまではいえない」ので、12月のパリツアーをキャンセルするにはキャンセル料を払う必要がある可能性が高い』
と、八代氏は結論づけました。
ひるおびより
実際の旅行会社の対応はどうなっているのか、番組で調べていました。
JTB、近畿日本ツーリスト、H.I.S.、日本旅行、阪急交通社では、テロ直後はツアーを中止したり、キャンセル料なしでのキャンセルを受け付けていたそうです。ただし、現在ではツアーを再開しており、11月26日以降出発のツアーについては通常のキャンセル料が必要になっているとのことです。
なお、フランスおよびパリに外務省から危険情報は出されていないものの、「パリ同時多発テロにともなう注意喚起」が出され、旅行者に具体的な注意を呼びかけているそうです。
ひるおびより
『旅行会社とも十分相談の上、ツアーに出かけてほしい』
と八代氏は語っていました。
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テロ騒動に巻き込まれてけがをした場合の医療費は?
問題
「ある国で夫と観光旅行をしていたところ、『近くでテロが起きた』というデマが流れ、辺りは大混乱に。逃げようとして激しく転倒し、脚を骨折して現地の病院で治療・入院するはめに。出費が大きいことが悔やまれるものの、夫には『海外旅行保険に加入していないので、全額自己負担するしかない』と言われた。日本の健康保険では治療費を払ってもらえないのか?」
番組出演者や観客は、払ってもらえない、という意見が多数派でした。
八代氏の答え
「払ってもらえる可能性が高い」
とのことです。
まず、日本の健康保険制度について説明していました。日本では、自分の入っている健康保険の負担割合に応じて医療費の自己負担額が決まります。ただし、これが適用されるのは、「保険医療機関」すなわち厚生労働省の指定を受けた日本国内の病院などに限られます。
これを聞くと「海外で治療・入院した場合は、やはり全額自己負担になるのでは?」と思いますが、健康保険法第87条、国民健康保険法第54条に、「海外療養費制度」についての規定があるというのです。「やむを得ない」と認められれば、海外で治療を受けた治療費も支給されるのです。
ひるおびより
では、どれぐらい払ってもらえるのか気になってきます。「日本で同じ治療をした際の治療費」と「海外で実際にかかった治療費」を比べ、安いほうの7割が支給されるのだそうです。
なお、番組では国民健康保険に加入している70歳までの人のケースであることを前提に「7割支給」と単純化して説明していましたが、加入している保険によって自己負担率は変わってきますので、自己負担率が1割の保険に加入している場合、「9割支給」になることを指摘したおきたいと思います。(参考:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3120/r138 「日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)から、自己負担相当額(患者負担分)を差し引いた額を支給します。」)
さて、その「海外医療費」をもらう手続きについても説明していました。
1 現地の医療機関で治療費を全額支払う
2 現地の医療機関で「診断内容の証明書」と「治療費の明細」をもらう
3 2の書類と申請書を健康保険組合に提出
4 約2ヵ月後に治療費が戻ってくる
ちなみに、『2 現地の医療機関で「診断内容の証明書」と「治療費の明細」をもらう』は間違いないのですが、海外の医療機関ですから、現地語で書かれた書類になりますよね?申請するときには、それぞれを日本語に翻訳したものも添付しないといけません。自分でできる人はいいですが、そうでなければ誰かに翻訳をお願いしないといけないことになります。(参考:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3120/r138 「それぞれ、必ず日本語訳を添付していただき、翻訳者の住所・氏名を記入し押印をしてください。」)
さて、番組の内容に戻ると、『今回のように海外で骨折した場合、日本に帰国してから治療するのでは遅いので、現地で治療・入院するのは「やむを得ないケース」にあたり、健康保険から治療費を払ってもらえる』
というのが、八代氏の結論です。出演者からは、払ってもらえることに対する驚きの声があがっていました。
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まとめ
時節がら気になる、「テロと旅行」の問題について具体的に取り上げられ、興味深い内容でした。海外でも治療しても、やむを得ない場合は医療費を支給してもらえるとは、うれしい制度ですね!
ただし、海外でも日本に比べての医療費の水準が非常に高い国もあるので、やはり海外旅行保険に加入しておけば安心であることは確かです。こちらのウェブサイト(https://www.hcpg.jp/wp2/wp-content/themes/wpremix3/pdf/medical_expense.pdf)の3ページ目を見ると、例えば盲腸になったとしたら、日本では治療費が40万円ですが、アメリカでは200万円を超えてきます。海外療養費制度を使っても、自己負担は莫大な額になるので、注意したいものですね。