田舎移住の損と得~支援策や実例/あさイチ『子育て世代の”いなか移住”』より

ここ数年、”田舎暮らし”という言葉を耳にすることが多くなってきています。

都会で長い間生活している人の中には、人と時間に追われる感覚に嫌気が指す人もいるようで、子育て世代~定年後のリタイヤ世代まで、田舎に移住してゆっくり暮らそうと思う人は少しずつですが増えつつあるようです。

田舎暮らしを対象にしたこんな本も発刊されています。


(2015年)5月7日のあさイチでは、『子育て世代の”いなか移住”』と題して、都会から田舎に移住する人と、そうした人たちを支援する行政側の人たちを取り上げていました。田舎にあこがれる人、多いんですね。
今回は、そんな田舎への移住についてです。

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長野県伊那市の事例

長野県伊那市は、上で紹介した『田舎暮らしの本』で

“子育て世代にぴったりな田舎1位”

に選ばれたそうです。移住者への充実した支援体制が評価されての1位ということですが、具体的にピックアップしてみると、以下のような点が評価されたようです。

選ばれた理由
・中学校まで医療費無料
・高校生まで通学費補助
・産科、小児科がある
・子育て支援が充実している
 ⇒ヘルパー派遣、悩み相談
・子育て世代向け住宅がある
・子育て世代へ家賃補助
・出産祝い金がある
・子育て給付金制度

産科、小児科があるとか、子育ての悩み相談ができるとか、中学校まで医療費が無料といったことは”ちょっとした規模の都市”であれば珍しくはない制度です。筆者の住む街も小学生までは医療費無料ですし、産科や小児科、悩み相談窓口などの支援ももちろんあります。

しかし、高校生の通学費に補助が出たり家賃補助や出産祝い金が行政から支給されるというのは田舎ならではかもしれません。

こうした支援策の効果もあってか、伊那市の小学校では、全校生30人中7人が移住家族の子供だったりするそうです。

地域の人も

「子供が増えることがものすごくうれしい。」

と満面の笑みで語っていました。過疎化に悩む地方にとって、移住者は基本的にはありがたい存在であるようです。

ちなみに、子育て世代への支援策としてよくあるのが保育料の減免や補助です。ざくっとですが、『ニッポン移住・交流ナビ JOIN』というサイトに掲載されている情報から、これらの補助をしている自治体をピックアップしてみました。ほとんどの場合、『二人以上同時に通園している』という条件のもと、第二子を半額に、第三子以降を無料にというパターンが多いようです。

保育料第二子半額第三子無料を実施しているところ

2015年5月8日調べ
自治体によって内容が変わっていたり廃止になっている場合があります。

北海道 旭川市、室蘭市、愛別町、浦河町、新ひだか町、鹿追町、更別町、鶴居町
宮城県 栗原市
山形県 大蔵村
福島県 川俣町、大玉村、西会津町
茨城県 常陸太田市、常陸大宮市、大洗町
群馬県 下仁田町、片品村
千葉県 富津市
静岡県 沼津市
三重県 鳥羽市
島根県 隠岐の島町
山口県 下松市、周防大島町
愛媛県 愛南町
高知県 越知町
長崎県 西海市

保育料の支援策は上記のパターン以外もいくつかありました。
たとえば第二子以降すべて半額とか、3分の1補助するといった内容です。

特に、移住一年目は、移住で収入が下がっているのに移住前年の高い年収で保育料を算定されるようなこともありえるわけで、そうなると保育料は大きな負担になります。移住を検討している人はこうした保育料支援の有無、あるいはそれらの代わりになるような支援策の有無を確認することはかなり重要なポイントだといえるでしょう。移住前の年収が高い人ほど注意が必要です。

番組で紹介されたAさん家族

番組では、伊那市に移住したAさん家族の状況について詳しく取り上げていました。

Aさんの家族構成
 Aさん48歳
 奥さん41歳
 長男6歳
 次男3歳

Aさん一家は、2015年3月に縁もゆかりもない伊那市に神奈川県相模原市から移住してきたそうです。もちろん、みんな田舎暮らしは初めてだったそうですが、地元の人から6平方メートルの畑を無料で貸してもらい野菜の作り方を教えてもらいながら家庭菜園に精を出しているそうです。家は地域移住支援の人から紹介された借家(3LDKで家賃17000円)です。

以前は、子供を遊ばせるにも『さあ遊びに行こう!』と構えた感じにならざるをえず、そんな状態を窮屈とすら感じていたのだとか。確かに、都会の生活には“昔ながらの自然”がほとんどありませんから、“お膳立てされたどこか”に行かなければ子供を遊ばせることも難しいのかもしれません。
しかし、今では子供たちは自然のなかで駆け回って暗くなるまで遊んでいるそうで、奥さんはそんな子供たちの姿を見て幸せをかみしめているようでした。

Aさん一家のこの話の中で、”地元の人から農地を貸してもらっていること”、”作物の作り方を教えてもらっていること”は重要なポイントではないでしょうか。なぜならそこをきっかけにしてコミュニケーションの輪を広げていくことができるからです。

番組でも指摘されていましたが、田舎暮らしで失敗する人の大半は地元の人とのコミュニケーションが取れずに自滅するパターンだそうです。田舎の人は優しそうなイメージがあるかもしれませんが、信頼されるまでには一定期間を要します。平身低頭にコミュニケーションを取りつつ、地元の人に積極的にお世話になるくらいの図々しさが必要かもしれません。

農地をタダで貸してくれる事情

過疎に悩む田舎の場合、土地の価値はあってないようなもので、筆者の実家がある田舎でもタダで農地を貸している人はいます。その背景には住民の高齢化があります。

かつて米なり野菜なりを作っていたものの、寄る年波には勝てずに農業を続けることができなくなった。しかし、放っておいたら耕作放棄地となり、土地が荒れてしまう。こんな状況に頭を抱えている農家の人は多いものです。

『放置しておけば?』と考えがちですが、農地をひと夏放置すれば雑草が生い茂って土地は荒れます。一旦荒れてしまった土地を再び農地に戻すのは大きな労力を伴いますし、田舎ですからすぐに噂にもなります。『〇〇さんとこも田んぼの世話ができなくなって土地が荒れ放題。』と。
それに、親の代から受け継ぎ、人生の中で少なからぬ時間を投下してきた農地を、自分の代で荒れ野原にはしたくない、そういう心情もあります。

ゆえに、農地を農地として使ってくれるならタダでもいいから使ってくれということになっているわけです。

仮にそこへかわいい子供を連れた移住者がやってきて、農地を使って野菜や米を作りたいということであれば、『よし、貸してやろう!』という人は少なくないでしょう。作物の作り方がわからないということであれば、手取り足取り教えてくれても不思議はありません。

さらに、今後は空き家を放置していると税金が6倍に跳ね上がります。かつて親が住んでいたけど今は空き家で、、、という場合は、貸すか売るかしないと家計をダイレクトに圧迫するという環境になります。となると、『古い農家だけど住んでくれるならタダで貸すよ』というケースも出てくるかもしれません。

若者が減り、子供が減っている今の田舎は、そんな感じです。

 

Aさん一家の仕事と家計の事情

Aさんは移住に合わせて2月に退職しています。どうやら無職の状態で移住してきたそうです。ちょっと無謀のようにもみえますが、伊那市で仕事を見つける心づもりのようです。

仕事の希望
Aさん・・・製造業、正社員、事務、管理職で月給20万円以上
奥さん・・・パート希望

あさイチでは、Aさん夫婦のハローワークでの仕事探しの模様が放送されていました。

当初、Aさんは“製造業の正社員で月給20万円以上”という条件で調べていましたが、それだと該当するのがわずかに3件。50歳前であることを考慮するとちょっと厳しいかもしれません。
そこで、事務、管理職という条件も追加してみたところ、該当件数は11件にアップ。
こうした状況を見て、Aさんは『選ばなければ何とかなる』と自信を深めたようでした。

奥さんはパート希望です。こちらもあれこれ選ばなければ何とかなりそうな感じでした。

次にAさん一家の家計です。

項目 移住前 移住後
手取り額 50万円 0円
支出 50万円 32万円
ただし、マンション売却ができれば23万円
食料 9万円 6万円
住居 9万円 10.7万円
ただし、神奈川のマンションのローン含む。売却できれば1.7万円
水道光熱 2.7万円 3.2万円
被服 2万円 0.5万円
医療・保険 5.5万円 1.5万円
交通 1万円 0円
自動車
駐車場
4.6万円 1.5万円
通信 2.2万円 1.6万円
教育・保育 8万円 5.2万円
娯楽 2万円 0.5万円
その他 4万円 1.3万円

現在、神奈川で住んでいたマンションのローンが9万円あるそうで、マンションを売却できれば月々の生活費はガクンと下がり、23万円でやれるそうです。もっとも、まだ移住したばかりですから今後どのくらいで生活費が落ち着くのか不透明です。医療・保険や被服が移住後に表にある金額まで下がるのかなと思わないでもありません。そうした状況や、子供の教育費など将来への備えも考慮すると月に30万円程度は見ておかないとだめでしょう。

厚労省の『賃金構造基本統計調査』によると、伊那市がある長野県の平均月収は約30万5,000円、平均年収は約434万3,000円です。これはあくまで平均値なので多少割り引いて考える必要はありますが、これをベースに推測すると、奥さんのパート給与と合わせた世帯月収が30万円というのは現実的な無理のない数字といえるかもしれません。

その他の地域の支援策

上記の伊那市の事例の他、大分県竹田市の事例も紹介されていました。

大分県竹田市
75歳以上の人口割合が25%で全国1位(65歳以上の割合41%)になったことで移住支援を強化。移住希望者のニーズにマッチした物件や人物を紹介してくれる。

1.物件、大家を紹介
番組では、家族で農業を始めたいという希望者に対し、農地が隣接する民家を紹介していました。所有者は大分市で暮らしているため代々住んできた家を手放す決意をしたそうです。今まで、毎月数日間は住んで家の手入れをしていたのでキレイな家でした。

2.近所の支援員を紹介
支援員とは、地区と移住者の橋渡しをする世話人のことだそうです。やはりここでも移住者を孤立させないような仕組みが設けられているわけです。こちらの場合、支援員同士で集まって情報交換もされているとのことでした。

3.将来の仕事のつながりになりそうな人を紹介
番組では就農希望者に対して市内のイタリアンレストランの経営者を紹介されている様子が放映されていました。将来のお客さん候補です。このように、将来、仕事でのつながりが発生しそうな人を選んで紹介してくれるそうです。

その他
学校、リフォーム業者の手配、もめ事の仲裁、先輩移住者の紹介

 

番組によると、全国1741の自治体のうち、1000以上で移住に対する支援制度があるそうで、ちょっと変わった支援策も紹介されていました。

鹿児島県三島村
就農希望者に子牛1頭か50万円
 ⇒8世帯22人が移住(2014年実績)
島根県浜田市
一人親限定で中古車支給
 ⇒介護施設で働くことが条件
鹿児島県志布志市
ピーマンが名産品。移住者のおかげでピーマン農家の平均年齢が48歳と若い(全国平均は66歳)。
 2年間の栽培指導
 最初の1年は夫婦で月25万円の手当が支給される
 研修後もハウスを建てる農地探しから契約までサポート

志布志市はかなり魅力的ではないでしょうか?
ピーマン栽培のスキルを身に付けられる上に1年間は月25万円の支給。ピーマンの栽培ができるようになれば、将来にわたってお金を稼ぎ続けることができます。移住直後にいくらかもらう支援金のようなものよりも役に立ちます。

移住に失敗しやすい人

移住自体、大きな決断と行動力を必要としますから、誰でも安易にしようとは思いません。移住したい人はそれなりに下調べし、覚悟のうえで移住してきますので、失敗に終わるケースはそれほど多くはないようですが、中には残念なケースもあります。
番組で紹介されていた失敗しやすいパターンは以下の通りです。

夢見がち
0508181519
×理想を頭の中で組み立てていて地域のことを理解しようとしない

現実逃避
20150508182016
×田舎の人なら受け入れてくれるだろうという思い込みの強い人

上から目線
20150508182123
×自分の意見が最優先で、地元の人の意見を聞かず暴走する人

NHKあさイチより

どのパターンも、田舎への移住に限った話ではなく、人付き合いが失敗する典型例といえるでしょう。番組では、六角精児さんが、『東京でも溶け込めない人は田舎でも難しいんでしょうね。』と話されてました。まさにその通りだといえます。

視聴者からの声

・病院などの社会インフラがなく、都会の人が思っているような感じではない
・老後でも近隣の人が心配してくれたりして住みやすい
・保育園はいつも園児を募集している
・閉鎖的な地域はある。積極的に地域行事に参加する必要がある
・娯楽がないので噂話だらけ。窮屈な思いをすることも。
・思った以上に学校が少ない。選べない。
・田舎暮らしを美化しすぎ。子育てのためにと利用するだけはやめてほしい
・田舎は人が少ないので人を大切にする気持ちも強い

田舎に暮らす人からは、そんなに甘いものではないという指摘がいろいろとありました。しかし、そう言ってしまっては田舎は衰退するしかありません。既に住んでいる人には見えない何かが見えているからこそ移住を希望する人がいるわけですから、やはり移住者とともに田舎を再生していこうと歩み寄る姿勢も必要です。移住は、受け入れ側も試されているといえます。

ぶどう栽培で年1000万円オーバー

筆者の田舎はぶどうの名産地です。同じ品種でも他の地区で作られたものとは値段が違うそうです。

中学時代の同級生は、東京で仕事をしていましたが体調を壊して地元に帰省、心機一転で始めたぶどう栽培で1000万円を超える収入を得ています。
この知人の場合はUターンであって移住ではありませんが、親の代も含めて米農家が圧倒的多数だった中でぶどう栽培に乗り出したあたり、”目のつけどころ”が良かったのだといえます。もちろん、栽培に関して工夫もいろいろしているそうで、栽培に関する情報をぶどう農家同士の会合で話し合ったりして切磋琢磨しているそうです。
こうした事情を聞きつけてか、ぶどう栽培目的の移住者もいるようで、素人ばかりでなくぶどう農家さんが移住してきたりもするとのことです。同じ手間なら高く売れる方が良いということでしょう。

このように、移住先に何か名産品があるかどうかをチェックしてみるのも良いかもしれません。就農して名産品の生産に携わることで移住後の収入を大きく伸ばすことも不可能ではないわけです。子供を自然の中で伸び伸びと育てることができて、収入も増やせる。都会の生活に窮屈さを感じている人には検討する価値のあることだと言えるでしょう。

参考サイト
ニッポン移住・交流ナビ JOIN – 田舎暮らしを応援します
あさイチ『子育て世代の“いなか”移住ライフ”』
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