今年の2月、空き家に関する法律が施行となりました。
『空き家対策特別措置法』
この法律、テレビなどのメディアでも取り上げられているので関心のある人はすでに知っていると思いますが、空き家を所有していると、最悪、税金(固定資産税)が6倍にも跳ね上がりますよという法律です。
4月14日のNHKあさイチでも空き家問題が取り上げられ、この法律が話題になっていました。
増税ではなく軽減措置が解除される
まず、なぜ税金が6倍になるのかというと、従来、ほとんどの宅地に適用されていた『住宅用地の軽減措置』が空き家を放置することで受けられなくなるためです。実は、日本の住宅用地、特に一般的な大きさの住宅が建っている土地(小規模宅地)は、税金が本来の6分の1に軽減されています。
<住宅用地の軽減措置>
住宅用地で200m2以下の部分(小規模宅地)の課税標準は6分の1とする
住宅用地で200m2を超える部分の課税標準は3分の1とする
その6分の1に軽減されていた税金が、軽減されなくなるので元の水準に戻る、軽減されていたころと比べると6倍になるということです。
なぜ空き家だと軽減措置が外されるのかというと、空き家、とりわけ放置された空き家が周辺住民にとって危険、迷惑なトラブルを引き起こす可能性があるからです。
・建物劣化(腐敗・腐食・カビ・シロアリetc)
・自然倒壊
・自然災害時の倒壊
・植物繁茂
・不法侵入(たまり場)
・不法投棄
・放火対象になりやすい
あさイチによると、国が公表している日本の空家の数は820万戸。実に7戸に1戸が空き家なのだそうです。
増え続ける空き家
そして、少子高齢化が進む日本では空き家は今後さらに増えていくのが確実で、それらを荒れ放題の廃墟にさせないことを目的にこの法律は整備されたともいえます。
この『空き家対策特別措置法』は、行政による立ち入り調査を可能にし、所有者に安全対策を求めることができる点が特徴とされていますが、実は、条例レベルでは似たような法律はすでにいくつもありました。今回、先行している条例を後押しするような形での法整備になっており、所有者による安全対策が十分でなければ、タイトルにもあるように、軽減されていた税金が元に戻り6倍になるだけでなく、行政による行政代執行も待ち受けています。もちろん費用は所有者持ちです。
ここまで聞くと、空き家を持っている人はびっくりすると思いますが、すべての空き家が税金6倍になるわけではありません。ポイントは"特定空き家"として勧告を受けるかどうかで、特定空き家に指定されなければ税金が上がることはありません。
特定空き家に指定されるのはどんな空き家?
肝心の特定空き家の指定ですが、あさイチで紹介された話では、
"管理されてない、周囲に迷惑、危険が及ぶ可能性がある空き家"
ということになっています。具体的には以下のようになります。
⇒倒壊の危険性がある
⇒景観を著しく損ねている
⇒庭木や雑草が生い茂っている
このような要件を満たしている空き家は行政より特定空き家として状況改善を求められることになります。立ち入り調査をされ、市からの要請も『助言・指導』からだんだんと強くなっていき、最終的には行政代執行という強制措置で家屋の撤去をされる可能性までありますので注意が必要です。
ただ、逆に言うと、所有者が適切に管理していれば、空き家のままでも問題はないということでもあります。全ての空き家が税金が6倍になるわけではないのです。
特定空き家の5ステップ
行政によって特定空き家の指定を受けた後も、代執行に至るまでにはいくつかの段階があります。
特定空家等に指定
特定空き家はガイドラインに沿って判断される。
助言・指導
状況の改善をするよう、所有者に行政が対応を依頼
勧告
助言・指導で状況改善がない場合にさらに必要な措置を取るよう促す
命令
勧告でも状況を改善しない場合に行政(市町村長)が改善を命令
行政代執行
命令してもダメな場合の最終手段。費用を行政が立て替えて強制で状況改善を図る。行政が立て替えた費用は所有者に請求。
最終的に行政による強制撤去がなされるまでには上記のようにいくつかの段階がありますから、ほとんどの場合は何等かの対応をすることで深刻な事態は避けることが可能です。ただ、たとえば倒壊の可能性があるような場合の対応は修繕するか撤去するかしか方法がありません。そうならないように定期的な管理、メンテナンスをしていく必要があります。
とはいえ、住んでない家の管理となると事はそう簡単ではありません。換気を怠れば湿気が逃げません。湿気がいつもこもった状態だと家の傷みはどんどんひどくなっていきます。カビも大量発生するでしょう。また、シロアリが発生していても住んでなければなかなか気づけません。庭木や雑草に至ってはひと夏放置しただけでかなり鬱蒼と生い茂ることになります。
知らないうちに特定空き家に指定され、税金6倍なんてことにもなりかねないわけです。
そこで注目を集めているのが空き家管理サービスです。
あさイチで紹介されていた空き家管理代行サービス
あさイチでは、NPO法人 空家空地管理センター(埼玉)という団体が紹介されていました。
2年前に設立された新しいNPO法人ですが、管理請負契約数が約50件、問合せも月に100件を超えているそうです。今後、『空き家対策特別措置法』が浸透してくるにしたがって、こうした空き家管理の需要はますます増えてくるのは間違いないといえるでしょう。
ここの空き家管理サービスは、月4000円~の費用で契約者の空き家を定期的(1か月に1回程度)に見回り、
・屋内の喚起
・水道水の状況確認(サビや水漏れの有無など)
・シロアリやハチ(の巣)など害虫がいないかの確認
・雨漏りの有無
・ポストの掃除
など、40以上のチェック項目を基に状況を確認、報告してくれるそうです。細かな点もチェックし、何か異変があれば所有者に連絡、修繕が必要であれば業者の仲介などもしてくれます。
また、見回り時は専用ベストと帽子を被って業者とわかるようにし、近隣への挨拶までしてくれます。近所の人から不信感を持たれないようにしっかり配慮してくれるわけです。さらには料金はもっとかかりますが、巡回回数を増やしたり、清掃してくれたりといったコースもあり、人が住んでいるのに近い形での管理ができるようになっています。お金を払うだけの価値はあるといえるでしょう。
他にもこの法律の受け皿になるような空き家管理サービスを民間会社が展開しており、月5000円~10000円程度が相場となっているようです。
大東建物管理・・・月5000円~
綜合警備保障(ALSOK)・・・月4000円~
東急リバブル・・・月6000円~
大手ばかりでなく、地域の中小不動産業者もサービスを展開し始めています。費用は5000円前後からのところが多いですが、内容を見てみると家の中までは入らず、外回りのチェックだけで5000円というケースもありますので、よく吟味することが必要です。
いずれにしても、空き家を持つということは、相応の負担がかかってくる時代になってきたことは間違いありません。自分で維持するなら特定空き家にならないように定期的にメンテナンスする必要がありますし、自分で維持できないなら空き家管理代行を利用するか家屋を解体する必要があります。
一番有利に立ち回るのであれば、空き家になった早い段階で売るなり貸すなりの判断をする必要がありそうです。ボロ屋になる前の決断が求められているといえるでしょう。