かつて、スキーのリゾート地として全国的に有名になった新潟県湯沢町の苗場スキー場。当時はバブル景気だったこともあり、リゾートマンションが乱立、数千万円もする物件が売れまくっていました。
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しかし、その後あえなくバブル崩壊。"負動産"と化したリゾートマンションの多くが売りに出されましたが、リゾート需要が激減したため買い手はつかず。価格は下がりに下がって数十万円という物件が続々と現れました。
NHK「所さん!大変ですよ」より
さすがに高級リゾートマンションが20万円といったあり得ない価格にまで値下がりしているのでメディアでも取り上げられることが多くなりました。通常、築20年程度のマンションが20万円なんてことはまず考えられません。それが、温泉付きリゾートマンションで数十万円だったりしますから多くの人の興味を引くのは当然です。
先日、この苗場のリゾートマンション事情について、NHKの『所さん!大変ですよ』で、「売れすぎてビックリ!? 謎の中古マンション」と題して激安マンションを購入して住んでいる人が紹介されていました。
実は、売れない売れないといいつつも、ここ5年ほどで1000戸以上も売れているそうで、苗場のマンションに限って言えば定住者が倍近くにまで増加しているそうです。
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ちなみに、苗場が属する湯沢町の人口は以下の通りです。
湯沢町の人口推移
2009年12月 8402人
2010年12月 8328人
2011年12月 8249人
2012年12月 8367人※条件満たした外国人も人口に含める
2013年12月 8349人
2014年12月 8272人
2015年3月 8204人湯沢町ホームページより
2012年に人口調査対象が増えたため一時的に増加していますが、それを除けば一貫して人口は減り続けています。そうした中で苗場地区のマンションだけ住人が倍になっているというのは特筆すべきことなのかもしれません。
番組で取り上げられていた事例をご紹介します。
Aさんは元水道局の職員です。バブル期、リゾートマンションが新築されたころは公務員として地道に生活しており、リゾートマンションを持つなんていうのは全く想像できなかったそうです。それが、定年退職後に激安価格で販売されていることを知り購入を即決。2部屋も買ったそうです。購入価格はなんと60万と10万円。二つ合わせても70万円です。
奥さんを東京に残し、一人苗場に移住、ゴルフにスキーにと、バブルの頃の憧れの暮らしを定年後に実現できたと喜んでおられました。
Bさんは画家さんです。いわゆる売れない画家さんのようで、今までの絵の売り上げは約300万円ほどなのだとか。永年、奥さんに食べさせてもらっていたものの熟年離婚。テレビで激安の苗場のマンションを知り、43㎡、1LDKの部屋を50万円で購入し移住したそうです。お金がないので老後に不安はあるものの、なんとかなるだろうと楽観的な様子でした。
Cさんの旦那さんは会社経営者です。ワンマンなところのある方で、Cさんは夫婦生活に疲れていたようです。息子さんが独立したのを機に苗場のマンションに移住、一人暮らしを謳歌されています(生活費は旦那さんの仕送り)。
20年以上勤めた会社を人間関係のもつれから退職。実家に引きこもっていたものの、父親との関係が悪くなり、19万円でマンションを購入し移住。この方は節約生活のため冬でも暖房を使いません。会社員時代の蓄えを切り崩しながら生活し、生活保護も視野に入っているようです。
というわけで、今回、NHKでは45人のマンション住人を取材したらしいのですが、そのうち21人が訳ありの移住だったそうです。
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苗場のマンションに定住している人の多くが高齢者
番組が指摘していたのは、『多くの移住者に共通しているのが"高齢である"』という点です。
地元の方にもこうした状況についてインタビューしていましたが、地元の方の間では『年寄りばかり住んでるね』と噂になっているそうです。また、孤独死もあったようで、町内会長さんは『家族に連絡がつかないこともあり、あまり良くはない状況だと思っている』とのこと。番組の冒頭VTRに出ていた市役所の方が満足げだったのとは対照的なのが印象的でした。
番組を見る限り、かつてはお金持ちでにぎわっていたであろう高級リゾートマンションが、今では貧困にあえぐ人の逃げ場になっている側面も垣間見られます。なんとも皮肉な展開です。
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販売価格は激安でも管理費等は必要なので注意
マンションの価格自体は安いのですが、管理費とか修繕積立金といった名目のお金は毎月必要になってきます。番組で紹介されていた画家のBさんもこうした管理費が思いのほか高額で負担に感じているとのことでした。実際にどの程度かかっているのか、苗場の物件を扱っているひまわり不動産という不動産屋さんのホームページを見てみると、
というような感じです。
表の中の10万円というのは家賃ではなく販売価格、20,280円とか36,560円というのが管理費になります。上記の表の中では安いところでも管理費が1万5000円程度はかかっていますし、平均的なラインだと2万円~2万5000円です。番組によると、『Bさんはわずかな年金収入と親戚からの借金で生活している』とのことだったので、そうした場合だと年金収入の人にとってはちょっと重い負担かもしれません。
いずれにしても、激安マンションが売れているのは事実のようです。日本の景気も上向いてきましたし、ここなら住宅ローンを組む必要もありません。元公務員のAさんのような、老後ライフを満喫したい層にもっと注目されると、たとえ高齢者ばかりになっても街に活気が出て良い方向に向かうかもしれません。