ここ1〜2年、相続税の増税や低金利を背景に、空き地や畑だった場所にアパートが続々と建てられています。
2016年9月のアパート着工戸数は11ヶ月連続の増加となっており、前年同月比では12.6%も増加しているそうです。
それにともなって、アパート経営のトラブルが急増しているといいます。
今回はこの件について詳しくまとめておきたいと思います。
目次
トラブルの始まり
アパートを建てている人は、お金持ちの人とは限りません。
例えば…
・ 「親の家を相続したけどそこに住む予定がない」という人
・ 「子どもの相続税の負担が心配」という人
・ 「子どもが独立したので家が広すぎる」という人
・ 「低金利で預金が増えないので年金だけでは不安」という人。
上記のような境遇にある人の元へ事業者が訪ねてきて、「いま借金をしてアパートを建てると相続税の負担が減りますよ」と言ったり、「家をアパートに建てかえて一部を自宅にすれば毎月の家賃収入が入りますよ」と言ったり、「今なら金利も低いので銀行も貸してくれますよ」と言ったりするので、特別にお金持ちというわけではない一般の人も続々とアパート経営に参入しているというのです。
ところが、実際にアパートを建ててみると…
実際にアパートを運営するとなると、「入居者募集」「賃料交渉」など、様々な業務が必要となります。
そこで、家主は建設業者やグループ業者にアパートを貸し付けて、管理を委託する契約を結ぶケースが多くなります。
この仕組みを巡って、トラブルが増えているのです。
たとえば、「入居者探しも行い、仮に空室でも賃料を保証します」「絶対に損はしない」などと言われて30年一括契約で委託したにもかかわらず、数年後に賃料の大幅引き下げを要請されたり、突然「契約を解除する」と言われたり、空室補償してくれなかったり、太陽光発電の設置を家主負担で要請されたりなどすることがあるそうです。
契約違反のようですが、契約書をよく見ると、「賃料は周辺の相場を見て2年毎に見直す」旨や、「合意できなければ契約解除を一方的にすることができる」ことなどが書かれていることが多くあります。
実は、事業者は最初にアパートを建てた段階で儲けをあげて、入居者が集まらなくなってくるとそのアパートを“切り捨てる”ことがあるため、このような契約内容にしてあるのです。
するとアパートの所有者は、賃料が下がってローン返済に行き詰まることになります。
今後の見込み
こういった事例が増えていることから、国土交通省は登録事業者に対して賃料が減るリスクや契約解除のリスクなどの説明を義務付けました。
しかし、そもそも国への登録は任意であるので、全国に3万2千以上ある事業者の10%程度しか登録しておらず、罰則のない規定でもあるので、完全な解決策とは言えないのが現状です。
首都圏のアパートの空室率は、昨年中頃から増えてきています。
これは、着工が増え始めた時期と重なっています。新しくできたアパートに人が集まると周辺のアパートに人が入らなくなって、結果的に空室率が上昇していると考えられています。
また、駅から離れた立地の悪い場所でもアパート建造が増えているため、人口減・世帯減による賃料減少でさらなるトラブルの増加が懸念されています。
業者に「何もしなくて大丈夫」と言われて家主になった人の中には判断力の弱くなったお年寄りもいます。
そういった“素人経営者”を消費者と捉えて考えると「消費者契約法」が適応されるので、不都合なことを隠して勧誘をした点から契約を取り消すことができそうですが、現状では家主は事業者とみなされる可能性が高く、消費者契約法は適応されないそうです。
まとめ
もし、「アパートを建てませんか?」というような勧誘を受けた場合は「経営者になる」という自覚を持って慎重に検討することを心がけましょう。また、契約内容もしっかりとチェックするようにしましょう。
それでもトラブルに遭ってしまった場合は、被害対策弁護団(078-371-0171)に相談してみると良いでしょう。