先日の「ワールドビジネスサテライト」では、近年急増している銀行カードローン破産について特集していました。銀行カードローンが多重債務者を増やすことになった理由とその仕組みや改正貸金業法の総量規制などについて、複数の専門家たちが説明をしていました。
目次
銀行ローンが原因の自己破産が急増
番組では、利率12.25%以上の貸出額が3年間で1兆円以上増えているという日本銀行のデータを紹介していました。
ワールドビジネスサテライトより
債務問題を専門とする東京市民法律事務所の三上理弁護士によると、年間6万数千件の自己破産のうち、負債額が300万円から400万円程度の自己破産は、銀行からの貸付を返済できなくなったからという理由が多数を占めているそうです。確かにこの数値には説得力があります。消費者金融から借りる場合はもうちょっと小口での借り入れが多いですし、数百万円規模になると消費者金融よりも利率が低い銀行カードローンへ借り換えするケースが多いからです。
改正貸金業法の総量規制とは?
2006年に貸金業法が改正されて年収の3分の1を超える貸付を禁止する総量規制が定められました。
法改正の理由は、2000年代前半に消費者金融による過剰な貸付や厳しい返済要求が社会問題となったためだったそうです。消費者金融などの貸金業者は、当然この規制の対象ですが、銀行は銀行法で規制されているため総量規制対象外です。
大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏によると、銀行には公共性がありヤミ金のような過剰な貸付はしないだろうという考えのもとで、銀行はこの規制の対象外となったとのことです。けれども、現実には銀行カードローンの広告に「改正貸金業法の総量規制の対象外」という宣伝文句が多く使われています。
ワールドビジネスサテライトより
全国ヤミ金融・悪質金融対策会議に参加した弁護士、司法書士、大学教授らからは、これらの広告が、まるでヤミ金の広告のようで品がないという声が聞かれました。法の網目をかいくぐっているかのような印象を与えてしまっているようです。
近年、総量規制のため消費者金融でお金を借りることができなかった人が、銀行でお金を借りて多重債務に陥るという、貸金業法改正前とは逆の現象が起こっているそうです。多重債務者のTさん(女性、パート、3人の子供)も消費者金融よりも銀行の方がお金を借りやすいと番組のインタビューに答えていました。
銀行がカードローンを強化する理由
銀行は、金融緩和の影響で主力事業(企業への貸付や住宅ローン)で利益を得るのが難しくなっています。それで利率の高いカードローンによる貸付を強化している銀行が増えているそうです。東京市民法律事務所の宇都宮健児所長と聖学院大学政治経済学科の柴田武男教授は、超低金利政策によって銀行カードローンによる利ざや(貸付金利−預金金利)が高くなっていることが、銀行を以前のヤミ金や消費者金融のような方向に向かわせている説明していました。
また、三上弁護士によると銀行カードローンの保証は、消費者金融やクレジットカード会社のような貸金会社がしているそうです。例えば、三菱UFJ銀行はアコム(株)、りそな銀行はオリックス・クレジット(株)、三井住友銀行はプロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)、みずほ銀行はオリコがそれぞれの銀行カードローンの保証会社になっています。
貸し付けた個人から資金が返済されなくても保証会社に肩代わりしてもらえるということも、銀行がカードローンを強化する理由の1つとのことです。
番組に出演していた専門家たちは、銀行が過剰貸出を続け多重債務者が増え続ける状況が続くのであれば、法改正をして銀行も総量規制の対象にするべきだと主張していました。
番組のインタビューに答えていた東京市民法律事務所所長の宇都宮健児弁護士は、元日本弁護士連合会の会長で、債務問題のスペシャリストとして多数の本を執筆しています。
多重債務の正しい解決法―解決できない借金問題はない
宇都宮 健児
「悪」と闘う (朝日新書)
宇都宮健児
まとめ
一般的には、消費者金融から借金をするよりも銀行から借金をしたほうが安心だと思っている人が多いと思います。けれども、この番組で、銀行のローンの保証を消費者金融がしていることを知って驚いた人も多いのではないでしょうか。どうしても借金をしなくてはいけない場合に銀行だから安心と思っていたのに、、、なんていう印象を持たれた方も多いかもしれません。
ただ、あれもダメこれもダメでは問題は解決しません。消費者金融は金利が高い、銀行も実は金利が高い、となると、例えば生活費といった多目的のお金を借りようとした場合はどこから借りれば良いのかという疑問は残ります。
さらに、多重債務者が増えているから銀行も総量規制の対象にするとなると、失業してお金がない、働いているけど充分な収入がないという人はどこからもお金を借りることができなくなります。そういった人たちの中にはヤミ金などに駆け込み人生が大きく狂う人も出てくるのではないでしょうか?
そういうとこまで考慮して規制を調整していくべきでしょう。